第15話 落とし穴とお風呂

1466 Words
 今日も日の出と同時に行動を始める。  午前中の予定はモルタル作りだ。  近場で見つけた石灰岩を切り出す。  これは風魔法では無理だ。  水魔法の【水鉄砲】と言う初期魔法があるんだけど、これのイメージをしっかりもち、射出するイメージを極めて細くしていけば、石を切り出す事もできる。  手で運べるサイズに切り出して、この石を焼成して手で触って崩れるくらいまで焼きを入れる。  これに砂と昨日作った木灰を混ぜて、水で硬さを調整しながらよく混ぜる。  モルタルのでき上がりだ。  午後からは、煉瓦小屋の屋根のドームを組むのにモルタルを繋ぎに使いながら組み上げていく。  都市設計と建築の本をしっかりと勉強した事が役に立って良かった。  結局は破棄されちゃったけど、セシリアの婚約者になって無かったら、こんな勉強は絶対にして無かったから、ある意味感謝だな。  後は二軒目の小屋も、床板を組み込み生活空間らしくなった。  キッチンや風呂場を作りたいけど、今日はもう魔力が厳しいな。  お風呂は煉瓦小屋の外に露天で作った方が良いか?  でもそれだと、女性が来た時とか困るかな……  風呂の周りに壁や脱衣場を作ればいいだろう。  まずは浴槽だけあれば困らないし。  その日の夜の事だった。  真夜中恐らく一時とか二時とかの時間だと思う。  外が騒がしかった。  間違いない。  魔物だ。  橋の所だけは門が付けてあるので、そう簡単に堀を乗り越えて、この拠点側を襲う事は出来ないはずだ。  俺は松明に火を灯し外に出てみた。  ゴブリンだった。  切り開いた森の奥からやって来たようで、こちらの様子をうかがっている。  こいつらは強くはないが、性格が残忍で何でも食べるから質が悪い。  見える範囲には十匹程のゴブリンがいた。  俺は拠点側から、矢を射って次々と倒した。  こいつらは、敵と言うか餌になりそうな人間を見つけたら、逃げるという行動を取らない。  全滅するか敵を殺すまで引く事が無い。  だから俺も容赦なく射かける。  一時間程の攻防戦でゴブリンは殲滅させた。  だが……まずいな。  このままゴブリンの死体を野ざらしにしとくと、今度は死体を喰らいにウルフやハイエナの魔獣が集まる。  俺はゴブリンの死体を片付けるために、拠点から出ると土魔法で穴を掘り、ゴブリンの死体を投げこむ。  心臓の辺りにある魔石だけは、ナイフで取り出して置く。  火属性の基本魔法【ファイア】で火をつけて燃やす。 (ゴブリン燃やすと臭いんだよな……)  でも燃やさないと、ゆっくり寝る事も出来ないからしょうがない。  燃えてる間は一度拠点に戻り、湯を沸かして紅茶を飲んで時間を潰した。  ゴブリンを燃やした火が収まってから、再び土魔法で穴を埋める。  もううっすらと東の空が明るくなりかけていた。  寝不足は体に悪いので、俺は小屋へ戻ってゆっくりと眠りについた。    起きだしたのは、もう昼に近い時間だった。  今日の予定は、落とし穴の作成だ。  先に落とし穴に並べる竹やりを作る為に、竹藪から竹を切り出す。  それから直径二メートル、深さ三メートル程の穴を掘り、竹やりを地面に突き刺す。  その上に竹を細目に割って五キログラム程度の物が乗れば落ちる様にバランスを取り、上に干し草をかぶせて、ぱっと見では解らなくする。  それを拠点の周りに二十か所ほど作る。  満遍なく作る事で、取りこぼしが起きない様に気を付ける。  夕方からは風呂の作成に取り掛かる。  河原で石を拾ってきて、モルタルで固める事で浴槽を作る。  当面は、水魔法で風呂を満たし、焼き石を放り込んで温める方法で対処する事に決めた。  周りと屋根は木材で囲う事に決めたけど、今日はまだ間に合わない。  明日の予定にしよう。
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