第4話 雀の情報収集(セシリア視点)

1601 Words
 私は夜空に飛び出した。    双子の妹ミーリア・フォン・ハインツによる殆ど謀反と言っていい出来事。  よりによって宮廷魔導士の命を使って悪魔を呼び出したなど……  彼女は双子なので見た目はそっくりだが、喋ればその品性の無さが露呈する残念な子だった。 よく言えば天真爛漫、悪く言えばアホの子の様な彼女は「お姉様はこの国を貰えるんでしょ? この国っていくらなのかな? 私は双子の妹なんだから、半分は私のだよね? 国なんか貰っても面倒だからお金にして半分頂戴ね?」  そんなあり得ない言葉を平気で吐くような子だった。  しかも、そんなミーリアを溺愛する現女王である母が大抵の我儘を許してしまっていたから、一向にその性格は治る事が無かった。  しかし、今日のあのミーリアはいつもと違っていた。  周到に準備を整え、一気に私と婚約者であるレオン様を排除した手際は、いつものアホの子のミーリアでは到底考えられない。  召喚した悪魔の影響とも考えられるが、それにしても不自然である。  実は、このチャンスを狙って昔からずっと準備をしていたのか?   悪魔召喚の秘術など、そもそも私ですら、(そう言う物が存在する)  程度の知識でしか無かったのに、宮廷魔導士をその気にさせて七十二人も集めるなど、秘密裏に行う事は無理だし、そもそもこの私、セシリアの名前でならまだしも、ミーリアの名前で動くことなど考えられない……  あ、今回と同じか……  ミーリアとしてでなく、セシリアとして秘密の命令を下したならば……  実現できる……  やられた……  完全に私がミーリアをただの我儘なだけの子だと認識していた。  彼女は、決して馬鹿では無かったのだ。  ただ、その本性は隠して、我儘なだけの妹を演じていたんだ。  でも……どうしよう……  この雀の姿では、あの悪魔大公を倒して姿を取り戻すなど不可能だよね?  そもそもどうやって他の人に私だと伝えればいいんだろう。  それに……レオン様はどうされたのでしょう?  まずは、レオン様のご実家に伺って見なくては。  私は夜空を飛び続けた。  ◇◆◇◆   レオン様のご実家であるクロワ侯爵家の王都邸のベランダに停まって内部を伺う。  レオン様のお父様であるクロワ侯爵の罵声が耳に届いた。 「全くあのバカ息子は肝心なところで失敗をしおってからに、我がクロワ侯爵家は社交界で大きな恥をかかされた。金輪際レオンハルトに関わる事は許さんぞ良いな」  二人のレオン様の兄上と、この家の使用人達を集めてクロワ侯爵が唾をまき散らしながら喚いていた。  やはり……レオン様もミーリアに嵌められちゃったのか……  だけどクロワ侯爵は、はっきりと告げていた。  金輪際関わるなと……  これは、生きているって事だ。  良かった……  だとしたら、私の次にとる行動は、当然レオン様を探し出して合流する事ね。  使用人たちが部屋を出て、公爵と兄上二人だけになった。 「父上。奴は、どこへ行ったのですか? 見つけ出して、この私自らがクロワ侯爵家の家名に泥を塗った罪で、その首を叩き斬ってやりたいと思います」 「あー。放って置け。そんなくだらない事で、お前迄怪我でもしたら馬鹿馬鹿しいではないか。それに、あ奴の放逐先などわしは知らん。近衛騎士団のアーサーが馬車で国外へ放り出しに向かったらしいが、別にどの方向などとも聞いておらぬでな」 「そうですか……残念です。セシリア王女の婚約者はどうなるのでしょうか?」 「それは、まだ何も発表がないが、恐らく改めてお茶会が催されると思う」 「今度こそこの私『レーヴェン』が王女の目に適うよう頑張りましょう」 「頼むぞ」  その言葉を聞いて私の身体には|虫唾《むしず》が走った。  誰がレーヴェンと婚約などするものですか! 私じゃないけど……  でも……私の名を騙るミーリアでは何をしでかすか解らないわね。  でも今の話の中にヒントはあったわ。  レオン様の親友であったアーサーならきっとそんなに酷い場所に連れて行ったりしない筈よ。  アーサーの屋敷へ行って見ましょう。
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