第9話 拠点づくりは順調に

1558 Words
 翌日も太陽が昇ると同時に起きだして作業を始める。  堀を掘るのも随分と慣れてきて効率よく掘り進む。  午前の間は続けて明日一日で目標は達成できそうな感じだ。  弓と剣を持ち川沿いに少し橋のかかっている方向に進む。  獲物を求めてだ。  川で熊型の魔物が、魚を捕獲している所に出くわす。  三メートルほどの体長があり、俺一人では敵いそうにない。 (気付かれたらヤバいな。大人しく隠れていよう)  そう思って岩陰に隠れ、熊から目を離さない様にしていた。  しばらく見ていると今度は狼の群れが現れて熊を取り囲んだ。 (やっぱり……この土地めちゃ危険だな。どっちにしても俺じゃ瞬殺されてしまうぞ……)  十頭程のグレーウルフとマーダーベアの激しい戦いが続く。  ウルフは五頭程が既にやられたが、熊も満身創痍の状態だ。  これは、このまま共倒れを狙って最後に残った奴なら、俺でも倒せるんじゃ無いか?  そう思った時だった。  川から巨大な口が現れた。  川に住み着く巨大な魔物『デビルキャットフィッシュ』だ。  その全長は十メートル近い。  弱り切った熊や狼はひとたまりも無く、次々と飲み込まれて行った。  更に河原で倒れていたグレーウルフたちまで、ぺろりと平らげた。  魚型なのに蛇の様に体をくねらせ、川原を這いずり回るその巨体は恐怖でしかない……  呆然とその光景を眺めた。  狼たちを全て飲み込んだデビルキャットフィッシュは川に戻り姿を消していった。  その場には、マーダーベアが狩りをしていた魚が十匹ほど残されていた。  俺は慎重に辺りを警戒しつつ魚を回収して、足早に自分の陣地に戻った。 (本当に、この環境で生き抜く事なんて出来るのか?)と思いながら……  それでも新鮮な魚を焼き魚にして食べると、とても美味しかった。  全部は食べきらないので、残りは二枚に開いて塩を振り、干し魚にしておく。  それから、また日が暮れるまではルビーフルーツを|齧《かじ》りながら、煉瓦造りを行った。  日暮れと共に土製のドームの中に入ると、火魔法で焚火をしながら過ごす。  【ブースト】のギフトは毎日発動はしてみるけど、何も変化が起こらない。  一体どうやって使えばいいんだろう?    翌朝も日の出と共に行動を開始する。  午前のうちにとうとう、俺の拠点を囲う濠が完成した。  次は、この堀に川から水を引き込み、排水路も川に戻すように整備する。  先に排水路から掘った。  この拠点は川からは五十メートル程の距離に作ってあるが、拠点を囲う濠ほど幅の広い排水路では無いので、午後の時間で完成した。  人が住むようになれば下水道の概念が大事であるのは、俺も都市設計を学んだので解っているが、ミスリルを手に入れる事が出来れば、スライムを活用した濾過槽が作れるので問題は無い。  王都でもスライム濾過槽が実用実験されていたけど、高価なミスリルを使用した事が仇となり、濾過槽が破壊されミスリルが盗み出される事件が頻発して、中々実現してない。  俺はその失敗事例を知っているので、濾過槽は地下に埋めて、周りを鋼鉄製の牢屋で覆う事を予定している。  まだまだ先の話だけどね。  濠を掘る時に出た土で作る煉瓦もかなりの数が出来上がった。  最初に作ったのはもう乾いて来たので、明日は焼き上げてそれを積み上げた家を作ろう。  この周りには薬草類は沢山自生しているのを確認したけど、これを使ったポーションを作る技術を持って無いから、このままではお金にする事が出来ないな。  枯れてしまってからではギルドでも買取をしてくれないし、この場所から枯れる前に街に持ち込もうと思えば、馬を使うか経過時間なしの魔法の鞄が必要となる。  王都で暮らしていたときは魔法の鞄は持って居たけど、追い出された時に価値のある物はすべて奪われているので、今は持って居ない。  そうなると現実的なのは、野生の馬を飼いならす事になるけど、この辺りにはいるのかな? 
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