第7話 開拓を始めよう!

1814 Words
  俺はウルル達の一行と別れた後で再び森の中へと入っていった。  この森の中で拠点になる場所を構築するためだ。  学園で学んだ都市設計の知識はきっと役に立つだろう。  そして、俺に与えられた【ブースト】のギフトとも、この機会に真剣に向かい合ってみよう。  過去の歴史から学んだ発展する都市の条件は、まず水場があり食料の自給が可能な事だ。  俺一人が暮らすわけでなく、街を作り国を興すとなれば重要な要因だろう。  だが、ここは凶暴な野獣が集まる魔の森だ。  食料の自給に加えて、魔獣と戦う為の力が必要になる。  剣も魔法も必要最低限程度の俺が、はたしてやっていけるのだろうか?  不安でいっぱいだ。    俺は商隊の移動中に目を付けて置いた東から西に流れる川の場所まで戻って来た。  この川には獣人国ビスティとハインツ王国の共同出資で作られた橋が架かっている。  もう三十年も前に掛けられた橋が、そのまま存在していると言う事は大きな水害なども無く、安定した地域なのではないかと思う。  農業を行うにしても家畜を飼うにしても一番基本になるのは、水である事は間違いがない。  ただし、この橋が目に入るような場所では駄目だ。  最初のうちは目立たない様に開発を行う事は大事だからね。  俺は、川を上流に遡っていく。  途中で魔物とも出会う。  この辺りの魔物はウサギ型とイノシシ型。  後はスライムとゴブリンを見かけた。  狼型が出てくると、一気に難易度が跳ねあがるんだよな。  奴らは群れるから。  角の生えた一角ウサギは弓で慎重に狙えば、俺でも難しく無く倒せる。  ボアは大型の物でなければ、弓でけん制して、剣を使えば何とかなる。  スライムとゴブリンは剣だけでも十分対処できる。  橋の位置から二キロメートルほどを遡った。  これより奥へ行くと魔物の強さが一段階上がりそうだし、この辺りに最初の拠点は定めよう。  俺は基本四属性の初期魔法を使えるので、場所を決めれば、まずは安全性の高い土地を作り上げる事にする。  範囲は最初だし、百メートル四方もあれば十分だろう。  この世界では魔法は一般的ではあるが、使える人は多くはない。  取り敢えず基本属性の魔法が一つでも使えれば、就職に困る事は無い程度には。  だが騎士団や軍で必要とされるレベルになると、俺程度の魔法や剣の腕では全く相手にされないんだ。  ギフトは本当に不公平だと思う。  まずは、決めた範囲の周りを、土魔法で掘り下げて|濠《ほり》を作る。  幅五メートル程で深さは三メートル程の濠にする。  土魔法で、ひたすら頑張って掘り続けた。  初日で予定の五分の一ほどの範囲を掘る事が出来た。  ここに来る途中で狩ったウサギを焼いて食事をする。  調味料はウルガーさんから分けて貰えたので、味気の無い食事は|免《まぬが》れた。  野菜が無いけど、付近に薬草を見つける事が出来たので、この薬草を刻んで塩味のスープを作ってみた。  意外に美味しい。  寝る時は掘り下げた時に出た土をくりぬいて、空気穴だけを確保した土のドームの中で寝た。  魔獣の襲撃を考えたらしょうがない。  朝になると川で水浴びをして服を洗って干して置く。  ウルガーさんに譲って貰った、着替えの服に着替えて二日目の作業に入る。  少しは作業の効率が上がって来たので、昨日と同じ範囲の掘り下げを、午前中で終わる事ができた。  時間をどうやって知るのかって?  そんなの簡単だよ。  太陽が真上に来ればお昼だからね。  その後は、森の中を探索した。  果物とかがあれば随分食生活は改善されるしね。  結果、柑橘系の果物の木を発見する事が出来た。  大きさ的にはグレープフルーツくらいの大きさの木だけど色が真っ赤なんだよね。  ちょっと食べるのに覚悟は必要だったけど、食べてみると美味しかった。  貴重なビタミン源を確保できたからラッキーだ。  見た事が無い実だから便宜上の名前を付けておこう。  赤いからルビーフルーツでいいや。  目的のフルーツは見つかったから、一度本拠地に戻った。  結構な量の土砂がたまって来たので、これに枯草と水を混ぜて、四角いブロック状に形を整えて、簡易レンガを作っていく。  そのまま日干しをして、ある程度乾いたら火魔法を使って焼成していこう。  日が暮れるまでの間に結構な数を作る事が出来た。  手でこねると、とても時間が掛かるんだろうけど、実際の作業は土魔法で行うから効率は抜群だ。  日が暮れて来たので、今日もウサギの丸焼きと、塩味のスープで夕食を取り、土のドームの中で眠りについた。  明日は少し魔獣を狩らないと、肉が不足しそうだな。
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